4 遺体衛生保全(エンバーミング)
北米で一般的な遺体処置の方法で、施設において遺体を洗浄・消毒し、防腐処置と、必要に応じて顔などの復元処置をし、最後に化粧を施します。防腐処置は血管を使って行い、静脈から血液を排出して動脈から防腐液を注入します。すぐ火葬に付すのに防腐処置が必要か、という疑問も投げかけられていますが、遺族や遺体を取り扱う人が、遺体から感染するのを防ぐために、公衆衛生上必要な処置ではあります。通常の場合、処置時間は2時間半~3時間。費用は12~15万円です。
エンバーミングした遺体は2週間程度の保存が可能です。劣化など気にしないで葬儀ができ、ドライアイスも不要です。さらに、遺体の保存期間が延びるので葬儀日程を遅らせることもできます。
また、エンバーミングを行った遺体は消毒、減菌されているので、感染症の防止に効果があります。腐敗や硬直もなく、きれいな別れができることから、遺族の心理を和らげるのにプラスになると言われています。海外へ遺体を送るときには、原則として遺体衛生保全処置を施します。
注目を浴びていますが、
導入後まもないため検討課題が残されています。
国内では、エンバーミングを直接規制する法律や従事者の資格はまだありません。
処理施設の管理の問題など、課題はたくさんあります。厚生省からは、適正に処理される限りエンバーミングは現行諸法規に触れないだろう、という研究報告が出ています。またその中では、実施手続の整備と遺体処理従事者の資質向上の必要性も指摘しています。遺体衛生保全については、日本遺体衛生保全協会(略称・IFSA)が組織されており、自主基準を設定しています。その内容は、実施にあたって処置内容の説明、料金の明示および遺族の同意を義務づけるものとなっています。